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抹茶開発物語

踏み出せなかった最初の1歩(2/2) [抹茶秘話話]

「うちが今も順調に商売ができているのは、先代が言うには、いち早く機械化を図ったことが功を奏したということですが、機械化に踏み切れた背景には、ありがたいことに、うちの生せんべいには根強いファンの方がいて下さり、世代をまたいで愛して下さるお家が数多くあったことが大きいと思うのです。流行り廃りが非常に目まぐるしいこの時代にあっても、いやそういう時代だからこそ、伝統の味を守り育てることが私の使命だと感じていたんです」

そんな田中社長の心をまず揺さぶったのは、「川一製茶有限会社」の2代目社長・川口伸一さんでした。
2006年の半田の産業まつりから遡ること2年。半田で製茶店「川一製茶有限会社」を営んでいた川口さんは、お茶のセレクトショップとしてさまざまな茶葉を扱う中で、同じ愛知県西尾市周辺で生産される抹茶の味と製造技術の素晴らしさに惚れ込んでおり、常々、その良さをもっと広く知らせたいと考えていました。

「抹茶というと、多くの人は宇治の抹茶をまず思い浮かべるかもしれませんが、実は西尾市周辺は昔から全国有数の抹茶の産地で、全国生産量の約20%がここから生産されています。この『西尾の抹茶』は、特許庁の地域ブランドとして、茶の分野で抹茶に限定したものとしては全国で初めて認定されたものでもあるんです。その特徴というか価値は、段階的に遮光の度合いを調整していく棚式覆下栽培によって「テアニン」といううまみ成分を引き出し、さらに茶葉を曳く際にも、必ず伝統的な石臼挽き手法を用いて、自然なうまみ、豊かな香りを引き立たせていることです。だから、本当に美味しい」

そんな川口さんが、西尾の抹茶の良さを広めるために着目したのが、幼いころから食べ親しんできた「生せんべい」だったのです。幸い、川口さんも商工会議所青年部のメンバーで、田中社長とは周知の仲。しかし、最初は川口さんの思惑通りには事は運びませんでした。

「『手間だから、うちはやらんよ』と、あっさりと断られました(笑)。うちとしては、田中屋さんの生せんべいにきっと合うだろうという抹茶ブレンド“田中屋スペシャル”を用意し、提案ぐらいはさせてもらえるだろうと思っていたんですが、それすらさせてもらえず(笑)」。

「ある意味、怖かった気持ちもあったんだよ。それまでにも『違う味もつくってみたらどうだ?』といろんな人に勧められ、ユズやシソ、桜の味などの試作品づくりにチャレンジしたこともあった。やってみるとある程度の味には仕上がる。でも結果的には『いろんな味もできるな。でもやめておこう』となってね。新しい味を出したことで、万が一、それが失敗したら、今まで先代たちが築き上げてきたものが崩れ去ってしまうのではないか、伝統に傷をつけてしまうのではないか。そういう不安が先立っていたというかね。本当は、抹茶味にはかなり惹かれていた。私自身が抹茶が大好きだったから(笑)。ただ踏み出せなかった」

Posted at 11時49分

2011年06月30日(木)

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